藤田忠先生 逝去に関するお知らせ

日本における交渉学の父である藤田忠先生が2021年5月15日に逝去されました。

皆様ご存じの通り、藤田先生は当協会の創設者であり、日本において交渉学の礎を築かれた日本交渉学の父といえる存在です。藤田先生は2021年5月15日に90歳で永眠されました。私は藤田先生から交渉学を直接学ばせていただき、NPO日本交渉協会の運営を任されましたが、私にとって藤田先生は人生の師でもあります。

藤田先生からは「交渉は厳しい対立にあっても相手を否定するのではなく、人間的なぬくもりのあるやわらかさのある交渉、やわらぎの交渉を実践しなければならない、交渉の目的は当事者同士の幸福である。そうした交渉を一人一人が積み上げていくことが世界平和につながる」ということを教わりました。
藤田先生は高い志を持たれ、社会の諸問題に対しては厳しい目を向けられて、問題解決のために何をすればよいのかを考えていらっしゃいました。リスクを恐れず前進し行動する気魄に満ちた先生でした。その一方で人に対してはいつも温かいまなざしを向けられ、とてもやさしい先生でした。私がお会いする際にはいつも優しいほほえみで迎えてくださり、私のつたない冗談にもいつも笑ってくださいました。先生に会うたびに心が安らぎ、活力をいただいたのを覚えております。

先生から教えていただいたのは交渉学ですが、本当に教わったことは人としての在り方だったと思います。つねに今を全力で生きる、前向きに、志高く、人にやさしく、感謝の心で生きるということを大きな背中で示してくださいました。平成30年の元旦にいただいた年賀状にはこうあります。「白髪の頭であっても心に夢がある どうってことない 俺はやるぞ」八十七才 自分がもし八十七才になることができたとしてこうした心持ちで生きていられるだろうかと想像した時には先生の偉大さを益々実感いたしました。

先生と最期にお会いしたのは2021年4月29日でしたが体調がかなりお悪い中、椅子に座って迎えてくださり1時間近くも相手をしてくださいました。身体は非常につらい状況だったと思いますが、お別れの際に温かい手でしっかりと握手をしてくださいました。さらに帰り際には立って見送りをしようとしてくださり、本当に驚きました。その時のことは一生忘れません。
内村鑑三は「後世への最大遺物」として「勇ましい高尚なる生涯」を挙げていますが、藤田先生はまさに「勇ましい高尚なる生涯」を残してくださいました。

藤田先生には「先生が灯された交渉学の火をしっかり受け継ぎ、皆で力を合わせて交渉学を発展させ、社会の問題解決に大いに役立つ形で実践、普及いたしました」といつか報告ができるように頑張って前に進んでいきたいと思います。藤田先生の魂の平安を心からお祈り申し上げます。

2021年6月 安藤雅旺

藤田理事長
藤田先生と奥様(府中 大国魂神社にて)