日本交渉協会の使命について
NPO法人日本交渉協会では日本の交渉力向上の基盤となる人材育成をめざして交渉アナリスト資格制度を確立し、運営しています。その事業の目的を「仁の循環・合一の実現」とし、交渉力向上のための教育事業を推進しています。
私たちは交渉の目的を「奪い合い型の交渉において勝つこと」に位置づけるのではなく、「奪い合い型から価値交換型、そして価値創造型へ交渉の次元を上げること」に設定しています。そのために、自己中心~自己利益の最大化(Focus:Self/Ego)から互恵中心~自他利益の最大化(Focus:Mutual Vaiue)そして志中心~共通目的・目標の実現(Focus:The Greater Good)に導いていく交渉者を養成していくことをその使命としています。
交渉アナリストは3つの理念「イーコールパートナーシップ」「燮の精神」「協創(統合)型交渉の実践」を礎にした存在であり、その役割としては大きく2つあります。1つめは「対立を両立に変える合意形成の実践」です。2つめは「異質なものの結合による新たな価値創造の実践」です。合意形成の当事者、または代理人として、いかに両者の合意の質を高めていくか、時には、自身が緩衝材として、または触媒となり、交渉を導いていくことが求められます。また交渉アナリストは他者との間に壁を作っていくのではなく、橋をかけるのがその役割です。そういう意味では、ネゴシエーターというよりはブリッジビルダーという言葉がより適切に当てはまります。
交渉者としてのロールモデルはエドウィン O. ライシャワーです。ライシャワーは当協会名誉理事長の藤田の友人であり、生涯をかけて日本と米国の関係構築に力を注ぎました。交渉アナリストの理念の一つである「イーコールパートナーシップ」はライシャワーの提唱した精神であり、米国と日本の関係を支配と服従の関係から対等で尊敬し合える関係に導くためのライシャワーの信念がそのベースにあります。ライシャワーが当協会の藤田に送ったメッセージがあります。
The world has at least really become one,
and we have to have great skill at negotiating with each other in this kind of world.
世界は本当にひとつになってきています。
こうした世界では、私たちはお互いに交渉で課題を解決する豊かな技術を育てなければなりません。
ライシャワーは著書『地球社会の教育 世界市民意識の創造』の中で、「人類は遠からず、地球規模でなければ解決できない多くの深刻な困難に直面するだろう」と予測した上で、「相異なる国民や国家の間に高度の理解と大きな協調の能力がなければならない」と述べています。そうした意味でも「異文化への理解」、「大きな協調の能力」としての交渉力はますます現代は重要になってきているといえます。
ライシャワーの高き志である「各国の人々が国際理解を深め、世界市民意識を醸成し、社会の問題を交渉によって解決していく」そうした精神を協会として受け継ぎ、実践し拡げていくことが使命でありその存在価値だと考えています。しっかりと自分自身が受け持った一隅を「仁の循環・合一の実現」の精神で照らしていきたいと思います。
NPO法人日本交渉協会 代表理事 安藤雅旺