特定非営利活動法人 日本交渉協会
特定非営利活動法人 日本交渉協会
交渉アナリスト1級会員
竹内 治之
現在のお仕事についてお聞かせください
製薬会社で、新薬の開発、海外の会社との製品価格交渉、新薬導入・導出を30年以上経験し、昨年退職しました。この間、国内外の同業他社との情報交換、協業の可能性調査、交渉の窓口を担当し、特に契約条件を取りまとめるため、社内、社外の意見調整、経済条件の価値評価などを行いました。
退職する前から、医薬関係と高齢者医療、介護との関係が今後重要になると考え、超高齢社会を迎えた日本がこれから世界で乗り切ってゆくにはどのようにアプローチしたらよいか考えていました。昨年3月末で退職し、現在、生涯現役の達成を目標とする教育関係会社のFacebookの管理者として、関連情報集めとサイトへの投稿、セミナーなどの出席と報告をしています。
交渉学を学ばれたきっかけ(交渉学を学ばれる前に苦労された経験など)
交渉の場面では相手にどうしたらこちらの条件を飲ませるかが大事で、勝ち負けがありました。会社の一員であるため、交渉に勝てば社内でも評価が高くなり、負ければ少しつらい立場になりました。交渉とはそういうものと割り切っていた時代です。仕事上のことで個人的に問題が生じたことはありませんが、交渉の仕方や相手との関係性をもっとよいものにはできないかと思うことも多くありました。
交渉学を学ばれて現場でどう実践されていますか(統合型交渉の実践の例など)
退職したため、ビジネス交渉の前面に出ることはありません。しかし交渉は会社だけで行われるものではありません。
超高齢社会では、①人と人(特に世代間)とのコミュニケーションがうまくできない、②会社を辞めたあと地域に溶け込めない、③昔を忘れられず命令口調になる、など(特に男性)高齢者がその環境の変化についてゆけない姿があります。
また、医療、介護とも多職種連携が必須ですが、それぞれ資格制度の規制があるため、柔軟性に欠けるきらいがあります。柔軟な協力体制をとり、患者を中心とした対応をするために、コミュニケーション能力の向上が課題となります。
これらの問題に対処するうえで、傾聴、共感、受容という交渉の基本的な考えとその応用を実践しています。
交渉学を今後どのように活かしていきますか(交渉に対する姿勢、モットーなど)
社会生活のあらゆる場面で交渉が生じます。いまだに交渉と言えば「勝ち負け」であり、「ブラフを入れること」だと思っている人が多くいます(かの国の大統領もその一人?)。交渉学とはなにか、統合型の問題解決、傾聴などまだまだ十分理解されていません。交渉の考え方を用いてコミュニケーションを円滑に行うことにより、交渉学そのものを広く認識してもらえればと考えています。