特定非営利活動法人 日本交渉協会
特定非営利活動法人 日本交渉協会
交渉アナリスト1級会員
末永 正司
現在のお仕事についてお聞かせください
鉄鋼業界の会社で、鉄鋼・半導体・機械装置ほかの営業職を19年ほど経験し、本社購買で購買職につき約10年になります。B to B価格交渉について、売り手側と買い手側、両方の実践経験で豊富。現在は本社で高額案件や集中購買品(本社で一括契約する全社分の購買品)の交渉や全社の購買担当者への指導を行っています。鉄鋼業界はまだ古い体質が残っており、特に九州では交渉学についての認知度が低いので、私の担当する社内教育研修で交渉を盛り込みようにしています。
交渉学を学ばれたきっかけ(交渉学を学ばれる前に苦労された経験など)
営業を担当していた頃、単価交渉は苦労の連続でした。客先からの値下げ要請を最小限に抑えながら受注量を上げるにはどうすればいいかを考えるのですが、毎回どこかで行き詰まってしまいました。市販本で学んだ小手先の交渉術を駆使してみてもうまくいかず、合意したものの勝ったのか負けたのか判断もつかず、もやもやした気持ちが続いていました。交渉には必ず基礎理論があるはずだと思い、探していたところ、日本交渉協会の交渉学の通信教育に出会いました。
交渉学を学ばれて現場でどう実践されていますか(統合型交渉の実践の例など)
現在は、購買職で多くの営業の方と価格交渉していますが、ほとんどの交渉が分配型交渉からスタートします。相手が分配型で交渉してこようとするので、最初はどうしてもこちらも分配型で対応してしまいます。
時間的に余裕がある場合は、こちらから統合型に誘導する方法を考えて実践しています。例えば分配型交渉で使われる交渉術のひとつ「ショッピングリスト戦術」を使う場合はこうです。1番目の要求項目はダミーの要求、2番目に本命の要求、そして3番目と4番目には相手が気づいていないだろうこちら側のニーズを織り込んでおきます。相手が当該案件の金額だけでなく、違う部分に価値を見つけて交換することに気づいてくれれば、合意までそれほど時間はかかりません。
交渉学を今後どのように活かしていきますか(交渉に対する姿勢、モットーなど)
時代や環境は変化しています。交渉学もその変化に順応していかなければなりません。基礎理論を現場で応用しながら実践理論の研究を続けていくつもりです。一方、交渉学の楽しさを伝え、少しでも交渉で悩む人の役に立ちたいと思っています。
交渉相手に対し、「勝ち」を求めるのではなく、「価値」を求めること。お互いに「価値」を見つけ、交換できれば、結果としてお互いの「勝ち」に繋がるはず。その状態がWin-Winであり、実践で目指すべき姿であると信じています。