特定非営利活動法人 日本交渉協会
松本邦弘
特定非営利活動法人 日本交渉協会
交渉アナリスト1級会員
松本 邦弘
現在のお仕事についてお聞かせください
現在、航空業界にてパイロットの採用に関する業務を担当しております。一般的にイメージされる採用活動とは少し異なり、産学官との連携を通じた「新たな雇用機会の設計」というものになります。
学生を見送る側と、受け入れる側において、それぞれの利害を適えるべく、また、なによりこれからの長いビジネスライフを過ごす学生にとって最も喜ばしい雇用機会を提供できるよう、日々奮闘しております。
交渉学を学ばれたきっかけ(交渉学を学ばれる前に苦労された経験など)
仕事をする上での立場が、徐々にプレイヤーからマネジメントへとシフトしていく中で、当然ですが、対象となる人間関係も、プロジェクト単位でのチームメイトから、組織全体の構成員一人一人へと変わっていきました。
そんな中、人間関係を「拡げていくこと」と「深めていくこと」に対する自身の得意不得意が少しずつ浮き彫りになり、苦手分野を克服したい想いから、「コミュニケーション」に関する学びの機会を探していました。
コロナ禍において、オンラインで教育を受講できる機会が増えたことが功を奏し、とある講演会でたまたま耳にした「身近な人へのお願いも、いわば『交渉』」という一言が、人間関係を深めていく手段としての「コミュニケーション」を、「交渉」という切り口に、捉え方を変えるきっかけを与えてくれ、その後、交渉学、ひいては日本交渉協会へと繋がっていきました。
交渉学を学んでどう実践していますか?
業務の特性上、社内外の多くの方との関わりがあり、実践する機会は多い環境だと思いますので、日々過ごす中で、現在は、①意識をする、②準備をする、この2点を重点的に取り入れるようにしています。
私にとって交渉学は、習得の初期段階であることより、意識していないと体現できないことがまだまだたくさんあります。特に体に染みつけたい意識として、具体的に「相手の関心事項」「(個人的に)陥りやすいバイアス」「価値交換or価値協創」の3つを念頭に、相手と対峙するよう努めているところです。
ただ、やはり意識するための物理的な行動がないと、「①意識する」の実践に結びつかないため、「②準備をする」という時間を創るようにしています。そうすることで、前述3つの意識を再認することができ、またそれが特に、「相手に投げかける質問の仕方・内容」の精度を高めることへと繋がっているのではないかと感じています。
このようにして、①意識をし、②準備をしてから相手と対峙することで、統合型交渉へと導く糸口を見出すようにしています。
交渉学を学び今後どのように活かしていきますか(統合型交渉の実践の例、交渉に対する姿勢、モットーなど)
究極的には、「交渉しない」という状態の実現に向けて、交渉学を追求したいと考えています。これは、所謂日本における「交渉」のイメージを相手に抱かせてしまうことのないよう、また、法律や権力などによって整理せざるを得ないような状態へ導くことのないよう、価値交換や価値協創を生み出し、互いの利害を適えていくことを意味しています。
航空事業は、労働集約的な産業であるゆえ、縦割りの組織を生み出しやすく、集団心理が強く働きがちな側面があります。それゆえ、社内における合意形成を難しくさせるだけでなく、社外とのコミュニケーションに消極的な姿勢を示す方も少なくありません。そのような状況においても、少しでも効果的かつ効率的な取り引きを社内外で実現できるよう、学んできたことの研鑽と実践を続け、会社の発展、ひいては社会の進歩発展に繋げてまいりたいと考えています。