特定非営利活動法人 日本交渉協会
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交渉アナリスト1級会員
藤田 健
現在のお仕事についてお聞かせください
素材メーカーにて入社以来一貫して調達業務に従事しております。
およそ調達は売買取引にフォーカスされがちですが、棚卸資産回転率向上や物流プロ
セス改善といった生産管理オペレーションの側面や取引先の再編(M&A、事業再
生等)、設備投資案件への関与といった事業価値向上に向けた活動も業務フィールド
としております。
調達は何をどういう風に仕入れて、どういう風に使うことが価値の向上に資するのかというVE(Value Engineering)を追求する行為であるところ、売主や社内各部門と協働して価値創造が出来るかが調達マンの力量を問われるものと考えております。
交渉学を学ばれたきっかけ(交渉学を学ばれる前に苦労された経験など)
調達は価値創造であると申しましたが、この価値創造をするためには同志が必要となります。調達マン単独でVEを努めるとなると、往々にして単純単価低減至上主義に陥り、何となれば安物買いの銭失いにもなりかねません。
調達してほしいというユーザー/供給したいというサプライヤーと共に、品質・納期・コスト・安定供給等のベストミックスを一緒に作りこんでゆくことが総原価に対するコスト削減に資するとともに、サプライヤーのビジネスにも資すると考えております。
とはいうものの、具体的に取り組むための方法論の構築に苦戦していたところで、交渉学の習得を決心した次第です。
交渉学を学んでどう実践していますか?
楽天の企業行動指針の中で「『スピード!!スピード!!スピード!!』重要なのは他社が1年かかることを1ヶ月でやり遂げるスピード。勝負はこの2~3年で分かれる。」
と謳われているように、ビジネスのスピードアップが早ければ早いほど、改善したビジネスの価値は複利計算で増大します。調達という観点で言えば、どのようにしてVE改善のPDCA回転率を上げるかが一つのポイントとなります。
ただ、調達の場合は他者との協働が前提となります。自分単独のスピードアップは現状一応成立している全体最適を部分最適化させる要因にはなりますが、全体最適に必ず資するとは限りません。全体最適化に至るためには他者との協働が必要となり、協働を可能とするためには交渉が必要となります。
交渉を有意に活用するには、例えば、交渉学でいうBATNA/ZOPAの設定やアン
カリングやグループシンクへの対処要領等が有用であります。交渉妥結に要する所要
時間が短縮される、意思疎通の不具合が減る等、交渉学は業務効率向上に貢献してお
ります。
交渉学を学び今後どのように活かしていきますか(統合型交渉の実践の例、交渉に対する姿勢、モットーなど)
調達の業務の中に交渉は埋め込まれていますが、交渉テクニックや気合いで乗り切るという側面が世間一般まだまだ残っております。理論の習得と実践によるスキルアップをするとともに、交渉相手方へも交渉学の考え方を普及してより良い関係性を構築することで共に発展してゆくことができればと考えております。