交渉アナリスト1級会員
鎌倉 倫史
これまでのお仕事の経歴についてお聞かせください
これまで、大手製紙メーカー、中小の工具メーカー、大手総合化学メーカーと亘り歩いてきましたが、キャリアのほとんどを海外営業畑で歩んで参りました。商材はこれまで、インクジェット用紙、写真印画紙、ドリルビット、及び、印刷感光材料を扱い、米州、欧州、東南アジア、ロシア、韓国、中国、中東などへ顧客開拓等の活動をしてきました。海外営業の醍醐味の一つは現地の新規取引先を開拓することですが、コンタクトを取ってから契約書の締結まで、時に一年超も掛かることなど苦労した経験もあり、これも相手からの一つの交渉の戦術だったのではないかと今にして思います。
交渉学を学ばれたきっかけ(交渉学を学ばれる前に苦労された経験など)
私は商学部の出身ですが、長らく文系が就く仕事は法律や会計の分野を除いては日本では仕事のスキルを磨くというより、人間性、人間力という曖昧な力の有無でその評価が下される傾向にあったと思います。「交渉力」というのもまさにその「人間力」によるものと捉えられがちでしょうし、私もかつてそう思っておりました。交渉とは何か頭の回転の速さ或は押しの強さの産物と。従って、私の交渉スタイルも「分配型」「敵対的」であり、時に相手から「共存共栄」という考えを持てませんか?と嗜められ、上手く事が運ばなかった経験もあります。そんな折、2013年頃に英国のビジネススクールのサンプル授業で初めて「交渉学」という学問があることを知りました。そこではまさに「姉妹がオレンジを分け合う」話が紹介され、各々の立場ではなく、関心に焦点を当て、各々その満足度を高めるために知恵を出し合うのが交渉の醍醐味という価値観に触れ、以来、「統合型」の交渉に関する書物で学び、学んだことを形にとの思いもあり、今年交渉アナリストにチャレンジしました。
交渉学を学び今後どのように活かしていきますか(交渉に対する姿勢、モットーなど)
顧客等ステークホルダーとのコミュニケーションで、例えば、条件交渉などの際に、双方に認識の齟齬があり、交渉の進捗が滞った際などは、共通のゴールは何か?に立ち返り、双方が互いの意向に思いを馳せられるよう導くことを心掛けています。個別の交渉項目に対する関心度合いの差を、誠実な話し合いを通して、認識し、譲り合うべきものは譲りながら、獲得したい事項は獲得していく。決して入口で立場の主張をし合うだけに終始しないことを心掛けています。交渉は相手の話を真摯に傾聴しつつ、的確な質問をしていくことが大事だと思います。自分自身を「問題解決人」として“セルフポジショニング”を確立することが重要です。今後は、「日本交渉協会」の活動を通して、交渉学をもっと日本で広く普及させる一助になれたらと思います。